景色をみながら泳ぐ 

ogata_toshi2007-02-02

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海に潜って 底の石にしがみついて体が浮かないようにする 水面を見上げる
息の続く限り水中から水面を見る
太陽と私の間を魚の群れが横切る


某入り江には 夏 イカの子供の群泳が居る
それを こちらも ただよいながら 下から観る 
魚よりずっとゆっくりなので 私でも充分に追いつく
イカの群れは 太陽に透かして下から見ると すごくきれい



その感じを持ち帰って作品にする
集まった体感は建物に成ったり器に成ったりする
島の白い家には白い器



ずいぶん前だがロンボク島へ行った
バリ島の隣 バリ島との海峡で生物分布が変わる
浜辺のバンガローにしばらく居た
昼間は海を歩いたり海の中を見たり
書庫があったので本をみたり
夜は地元の人と話してずごす
夜の海は夜光虫でいっぱいになり美しい



バリのアグン山は3千メートル以上ある
ロンボク島には もっと高い山がある
ロンボクから小スンダ列島をたどり西方にある鯨漁をする島に行こうと思っていたのだが 当時は就航便が極端に少なく果たせなかった



北側に長い浜がある
細かい珊瑚欠片の浜 白くて目に眩しい
早朝にアウトリガーのあるカヌーで漁師さんが海に出る 帰ってくる 村の人がポツポツと浜にくる
それからあとは誰も海にこない 静止画像のようにずーっとおんなじ
風景のなかでわたしだけがうごき 太陽だけが傾いてゆく
私しかいない そのような日がつづきました



浜を歩く
波にそって
ずっと歩いて振り返るとくねくね曲がった足跡がつづいてる
とても長い白い浜にわたしの足跡しかない



海はほとんど波が無くて静か
歩くのをやめないと波の音を聴き取るのがむずかしいくらいで 打ち寄せる波と帰る波が合わさるわずかな音がする
青くて
空との境目がわからないくらいで
すこし霞んでバリのアグン山がみえる



海に入ると枝サンゴが完璧に在って森のようだった 歩いては進めない
浅瀬を浮きながら浜から離れる



青い海の水を手のひらですくってみる
指の間からは 透明な海水がこぼれ落ちるだけで
透明が美しくてなんどもやってみる



海も大気も 幾重にも重なる透明な層
そこに太陽のひかりが参加すると「青」がうまれる


大気の底に居る私たちは 押しつぶされた大気の重圧を苦痛に感じているだろうか
私たちは この圧力の中でしか解放されない 
それだけが私たちの自由



地球の周りに貼り付いた林檎の皮のような大気の層の中に
私たちはいる
青の中にいる
青の中で私たちは解き放たれる




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